チャットボットではシナリオが重要
良いチャットボットとは、ユーザーがより効率的に何かを達成できるようにしてくれるものです。中でも優れたものは、チャット体験自体を楽しくしてくれます。
一方で悪いボットは、ユーザーの時間を無駄にしたり、意味が通らない返答をしたり、ユーザーをイライラさせたりして、離脱率を高めてしまう可能性があります。
これは機能でカバーできることもありますが、そのほとんどが『シナリオ』が原因であることも多いのです。
逆に言うと、AIなどがなくても快適な顧客体験を提供できるチャットボットを作成することは可能、ということになります。
その顧客体験をより良いものにするために必要なこと、その柱となるのが「シナリオ」です。ぜひ、どのような効果を期待するのか、必要な機能は何か、を考えるとともにシナリオにもぜひ目を向けていただきたいと思います。
チャットボットでのシナリオ作成ポイント
まず、シナリオ作成の際に気を付けたいポイントを念頭に置いていただくと、シナリオの作成がスムーズです。
導入目的の再確認
シナリオを作成していくうちに、本来の導入目的から逸れてしまうケースが少なくありません。何のためにチャットボットを導入するのか、CVを改めて確認しておきます。
ノートやマインドマップを活用し、書き出すことで気づかなかった課題を発見することもあります。シナリオとCVにかかわる関連部署との確認も必要です。
凝りすぎない
凝りすぎたシナリオを作成することで、ユーザの操作性が失われてしまっては意味がありません。操作性はシンプルで分かりやすいことが重要です。
複雑にしすぎない
チャットボット導入時は狭い範囲で導入し、運用後に徐々に利用範囲を広げるというのが一般的です。
初期導入時点の範囲に合わせた複雑なシナリオにしてしまうと、その後の利用拡大の妨げになったり、活用範囲が限定的になってしまう可能性があります。
今後の活用範囲も意識しながらシナリオを検討し、運用しながら改善していくことがおすすめです。
何をもって目標達成となるのかが分からない状態で作成を始めてしまうと、ユーザーを迷わせてしまうシナリオになりかねません。
チャットボット運用においてシナリオ設計はとても重要
回答までのステップ数が多すぎないかなど、ユーザービリティも検討することが大切です。
具体的に目的などが定まったら階層設定やフローチャート、分岐条件の定義を作成します。
FAQを精査する
似たようなQAがないか、回答が古くないか、リンクを提示している場合はリンク切れがないかを確認しましょう.
ここでよくあるのが、今まであった問い合わせをとにかく詰め込むという失敗です。
すべての問合せに対して回答できるように!という意気込みはいいのですが、実は多く入れればいい、というものではありません。
もし、導入予定のチャットボットに予測機能があったとしても、似たようなワードが含まれたQAが多いと提示数が膨大な量になります。
さらに、細分化しすぎると、どうしても階層が深くなってしまいユーザーのアクションが増えることになります。
こうなると、離脱率が上がってしまう要因ともなり、ユーザビリティが良いとは言えません。
Excelなどでしっかり項目分けを行い、統合できるQAは統合しユーザーが探しやすい構成を心掛けましょう。
実際の構成を考えるときはフローチャートを活用しよう
マインドマップやフローチャートツールで作成すると視覚的にも把握しやすいのでお勧めです。回答がない質問に対してどこへ返すか、再訪者に対しての出し分けなどチャットボットのシナリオを変えるかどうかも確認しましょう。
さらにチャットボットだけで運用した方がいいのか、それとも社内で使用しているシステムと連携させた方がいいのかも確認が必要です。
目的に応じてシステム連携が必要になることも多いため、どのシステムを連携するのか、部署間の連携はどうするかなどを確認しましょう。
チャットボットの種類
シナリオは使用するチャットボットによって変える必要があります。
チャットボットには大きく分けて「ルールベース型」と「AI(機械学習)型」の2種類があり、それぞれ特徴が異なります。QAの量や理想とするUIに合わせてチャットボットを選択しましょう。
ルールベース型チャットボット
「ルールベース型」のチャットボットは、一定のルールに従って返答します。このことからルールベース型とも呼びます。
あらかじめ設定しておいたシナリオをある条件に基づいて選択していくことで、対話を進めCVにたどり着くことができます。設計者はルールとなるシナリオを作成・設定しておくことが必要です。
このシナリオから外れたことには対応できないため、自動応答範囲を広げたり応答制度を高めたりするには、シナリオの数・階層・分岐を増やさなくてはならず、手間がかかる傾向があります。
「シナリオ型」チャットボットともいわれています。
AI(機械学習)型チャットボット
一方「AI(機械学習)型」のチャットボットは、人工知能(AI)を活用して、決められた言葉や選択肢からだけでなく、ユーザーが入力した言葉をもとに、文章全体を解釈して近いと思われる回答を導き出すことができるのが特徴です。
各チャットボットソリューションによって、どのように回答を導き出すかの定義は異なりますが、あらかじめ大量の文章データを使って事前に学習させておいた学習データ(コーパス)を使っているケースが多いようです。
「一問一答型」チャットボットともいわれますが、一般的にAI型と呼ばれるチャットボットは、この機械学習の仕組みを指すことが多いです。
データを再学習し精度を高めていくことが可能ですが、データの質が悪かったり量が足りなかったりすると、高い精度は期待できません。
基本的には上記2種類ですが、AIを搭載しているもの、いないものを目的に応じて使い分けたり、あるいは「ハイブリッド型」として、両方のメリットを上手く活用して、最適なチャットボットソリューションに作り上げていくことも可能です。
シナリオ型は主に3種類
シナリオ型は「階層分岐型」「辞書型」「選択肢&辞書型」の3種類に分類できます。
階層分岐型
チャットボットが示す階層構造の選択肢をユーザーがたどって回答を得られるタイプです。質問分岐が正確にできるサービスに向いています。
誰にでも作れる単純な仕組みですが、回答範囲を広げるためには、階層分岐を広く深くする必要があります。実現したいサービスによっては作業工数が増えてしまうでしょう。
ユーザーが手軽に利用できる反面、質問が決まっていても階層分岐をたどらなければならないのがデメリットです。
辞書型
辞書型のチャットボットでは、ユーザーは自由形式で会話します。
ユーザーがブラウザで検索するように自由に入力し、チャットボットはそこに含まれたキーワードの組み合わせから返答を探して回答を選びます。
キーワードが該当した場合、人間のようにスムーズに会話をすすめることが可能ですが、事前に大量のキーワードの組み合わせと、それに対する回答を入力する必要があるため、想定されるキーワードの範囲が広いと作成に手間がかかります。
選択肢&辞書型
選択肢型と辞書型の機能を併せ持つチャットボットでユーザーに使いやすい方のタイプを選択してもらいます。
まとめ
チャットボットのシナリオ作成のポイントは
導入目的の再確認
凝りすぎない
複雑にしすぎない
FAQを精査する
フローチャートを活用する
ポイントを押さえて、AIが必要か、必要ではないかも含め、ぜひ使いやすいシナリオのチャットボットを作成してみてください。
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